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オックスフォードストリートなどの繁華街に出ると、道路をまたいでゲートのように、イルミネーションが飾りつけられていたが、それはとても安っぽく見えた。
夜になると、ベルとか天使の羽とかクリスマスにちなんだいくつかの意匠が電球によって浮かび上がるのだが、私は日本の昭和三十年代の、素朴で単純なネオンサインを思い出した。 日本のデパートの大掛かりな電飾に比べれば、ロンドンのそれは、よくいえば質素、悪くいえば貧相と表現したくなるものだった。
無理もない。 九○年といえば、日本はまだバブルの余韻がたっぷり残っていた頃だ(その後の地獄の苦しみを、まだ誰も予想していなかった)。
一方、当時のイギリスは不況にあえいでおり、失業者が三百万人近くに膨れ上がっていた。 景気の状況が、街の飾りつけにもあらわれていたのである。
それから日英の景気は全く逆の方向に動いた。 今、日本に帰ると夜の繁華街の暗さに驚かされる。
銀座もまるで元気がない。 立ち止まって東京の夜景を眺めると、目立っているのはサラ金の看板だけだ。
それに比べ好況に転じたイギリスでは、街の飾りつけは立派になり、年々垢抜けたものになっていった。 ただ、クリスマスになると、日本各地に出現する、電球を何万個も使った精妙で大掛かりなイルミネーションに比べれば、イギリスのそれは今でも単純かつ簡素である。
さすがに、昭和三十年代のネオンとまではいわないが、目を奪うほどの電飾でないことは確かだ。 しかし、それが街の活気の中にうまく溶け込んでいて、違和感はない。

クリスチャンの国であるイギリスでは、日本の盆や正月以上に、クリスマスを大切にし、皆で祝い楽しむ。 仲間が集まり、昼はクリスマスランチ、夜はクリスマスディナーで馬鹿騒ぎをする。
もちろん騒ぐばかりではない。 イブや翌日のクリスマスデイには教会に行き、礼拝に参加する。
交通の渋滞もひどくなる。 ふだんでさえ混雑するロンドンの街路は、車であふれかえる。
この国の人々が一年で一番買い物をするのもこの季節である。 ある統計によれば、商店は年間売り上げの約二割をクリスマス時期に稼ぎ出すという。
それにしては、街のイルミネーションはおとなしく、少しもけばけばしくない。 私は、その節度を好ましく思う。
一方、日本人はクリスチャンでもないのに、なぜあのように光の森のようなイルミネーションを作るのか、私はとても不思議に思う。 電力の浪費という声があがらないのであろうか。


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